NHK 教育テレビ 2015.11.13 – 12.04 23:00 – 23:50 (50分)
カリフォルニア大学バークレー校の数学者、エドワード・フレンケル教授が、数学界最大のミステリーの一つ「ラングランズ・プログラム」の不思議な世界にご招待する!
数学界でこの半世紀の間に大発展をとげた重要かつミステリアスな”予想”がある。「ラングランズ・プログラム(Langlands Program)」と呼ばれるものだ。数論や調和解析などと呼ばれる、数学の様々な分野が実は”地続き”で、最終的には”統一”できるかもしれないという、いわば数学の大統一理論である。もし、数学の全ての分野を互いにつなぎ合わせることが出来れば、数多くの難問が解決するかもしれないという数学者がいるほど非常に重要なものなのだ。実際、あの「フェルマーの最終定理」もこの「ラングランズ・プログラム」の目論見どおり、数論の問題を調和解析の言葉に翻訳することで350年ぶりに解決された。今回、この「ラングランズ・プログラム」へ私たちを招待してくれるのは、カリフォルニア大学バークレー校のエドワード・フレンケル教授。現在、アメリカで最も有名な数学者の1人だ。数学の魅力を誰よりも知り尽くしたフレンケル教授が、私たちの数学のイメージを一変する!
【出演】エドワード・フレンケル (カリフォルニア大学バークレー校 数学教授)
番組ホームページ
2015.11.13 23:00 – 23:50 (50分)
第1回 数学を”統一”する!
第1回は「ラングランズ・プログラム」入門。数学には「数論」「調和解析」「幾何学」などさまざまな分野がある。しかしそれらの間に、どうやら奇妙なつながりが存在するらしいことがこの50年間で少しずつ分かってきた。実はそれらの分野を互いにつなぎ合わせ、いわば「数学の大統一理論」を作ろうというチャレンジこそが、現代数学の最大の課題なのだという。学校では学ばない数学の未知の姿が明らかになる!
まずフレンケル教授は問う。「数学とは何か?」「数学は人類が発見したものか?」「宇宙人も我々と同じような数学を発見するのだろうか?」。フレンケル教授は、数学は人間の存在を超えた永遠不滅の真実であり、この宇宙全体で共有されているものだと強調する。さて、その数学の”隠された美”を知るためには、まず、数学には幾つかの分野があることを知ることが重要だ。その分野とは「数論」、「調和解析」、「幾何学」など。実は、それらの分野を互いにつなぎ、いわば数学を統一しようというチャレンジこそが、現代数学の最大の課題であり最もエキサイティングなものなのだという。フレンケル教授が「ラングランズ・プログラム」と、数学の分野をつなぐ”鍵”となる「対称性」と呼ばれる概念を紹介する。
番組ホームページ
2015.11.20 23:00 – 23:50 (50分)
第2回 数の世界に隠された美しさ ~数論の対称性~
「数論」が持つ”対称性”に着目し、ある難問にアクロバット的解決を与えたのが19世紀のフランスの天才数学者、エヴァリスト・ガロアだ。その難問とは『5次以上の方程式に解の公式はあるか?』。ガロアは決闘に敗れて亡くなる前夜、この難問に対する驚くべき解決法を書き残した。それは「数論」の問題を正面から解くことを避け、裏に回りこんで”ハッキングする”ような手法だった。「ラングランズ・プログラム」の原点とは?
「幾何学」という分野に対称性という概念が登場することは図形を観察すれば何となく理解できる。しかし、数とは何かを探る「数論」という分野にも見えざる対称性が存在し、それが「ラングランズ・プログラム」を理解するのに重要だという。数論の対称性に着目し、ある難問にアクロバット的な解決を与えたのが19世紀のフランスの数学者、エヴァリスト・ガロアだ。 ガロアは20歳の時、決闘で亡くなる前夜に、ろうそくの明かりの下で、驚くべきブレークスルーとなる発見を手紙にしたため、数学のあり方に革命を起こした。
フレンケル教授はその手紙を「人類全体に宛てたラブレターだ」という。数学界の”天才ハッカー”とも呼べるガロアの驚異のアイデアを紹介していく。
番組ホームページ
2015.11.27 23:00 – 23:50 (50分)
第3回 “フェルマーの最終定理”への道 ~調和解析の対称性~
350年以上にわたり誰も解けなかった世紀の難問「フェルマーの最終定理」は、もともと「数論」の分野の未解決問題だった。だがその問題を「調和解析」という分野とつなげ、「調和解析」の言語に翻訳した瞬間、その難問は解決されたのだった。実は「数論」と「調和解析」という二つの分野をつなぐことに最も力を尽くしたのは日本人数学者だった。フェルマーの最終定理解決の道のりを、数学者たちの数奇なる人生とともにたどる。
350年以上にわたり誰も解けなかった世紀の難問「フェルマーの最終定理」は、もともと「数論」の分野の未解決問題だった。だがその問題を「調和解析」という分野とつなげ、「調和解析」の言語に翻訳した瞬間、その難問は解決されたのだった(ワイルズとテイラーによる1995年の証明)。実は、「数論」と「調和解析」という二つの分野をつなぐことに最も力を尽くしたのは日本人数学者だった(「志村・谷山・ヴェイユ予想」)。「調和解析」の対称性に着目したこの予想は「ラングランズ・プログラム」の一部であり、中核的な役割を果たすものだという。講義では、フレンケル教授が、誰も気づかないミステリアスな”つながり”を最初に発見した日本人数学者・谷山豊の人生をたどる。31歳で生涯を閉じた谷山の人生を見ると、数学が無味乾燥なつまらない存在ではなく、人間のパッションや創造性、そして心動かす人生の物語だということが分かるという。フェルマーの最終定理が解決された道のりをたどっていく。
番組ホームページ
2015.12.04 23:00 – 23:50 (50分)
第4回 数学と物理学 驚異のつながり
最終回は「ラングランズ・プログラム」をさらに拡張し物理学の世界へも橋をかける!フレンケル教授は、全ての物質の根源となる素粒子の性質の理解が数学の理論の後押しによって進展してきた事実を強調する。さらに、この10年間で、量子物理学やスーパーストリング理論の世界とラングランズ・プログラムとの関係が次々と発見されてきたという。数学は単なる抽象的な存在ではないのではないか!現実世界と数学の驚異のつながりとは
最終回は「ラングランズ・プログラム」の考え方をさらに拡張して、理論物理学の世界へも橋をかける試みを見る。フレンケル教授は、全ての物質の根源となる素粒子の性質を理解することが、いかに数学の理論(特に対称性)の後押しによって進展してきたかを強調する。実際、クォークの発見は純粋数学の理論から予言されたものだった。さらにこの10年間で、量子物理学やスーパーストリング理論の世界とラングランズ・プログラムとの関係が次々と発見されてきたという。抽象的な数学を突き詰めれば、やがてこの宇宙の法則を次々と解明することに繋がるとも考えられるのだ。それにしてもなぜ、抽象世界を描くはずの純粋数学が、現実を記述する物理学と深いつながりを持つのか…。この「自然科学における数学の不合理なほどの有効性」はどこからやってくるのか…。数学は単なる抽象的な存在ではないのではないか…。フレンケル教授が、私たちのすぐそばにパラレルワールドのように存在する”隠された実態”としての数学を、私たちに気づかせる!
番組ホームページ